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東京地方裁判所 平成2年(ワ)8514号 判決

原告

守弘移植重機(株)

被告

大木國男

事実及び理由

第一原告の請求

主文同旨

第二事案の概要(省略)

一、争いのない事実

1. 被告が本件特許権の特許権者であること。

2. 原告が、被告から、本件特許権につき、昭和61年11月18日契約を原因とし、同62年3月4日受付第516号にて、同年4月27日登録の本件専用実施権の設定を受けたこと。

3. 本件専用実施権は平成元年11月19日契約解除を原因とし、同2年3月30日受付第888号にて、同年5月28日に抹消登録されているが、この抹消登録申請(本件申請)は、原被告連名の「契約解除による専用実施権抹消登録申請書」(本件申請書、甲三)によりなされたものであること。

4. 被告が、平成2年6月末ころより、原告の取引先に対し、文書及び口頭により、原告の本件専用実施権の設定登録が抹消された旨の事実を陳述し又は流布していること。

二、争点

本件申請書が原告の意思に基づいて作成されたものであるか。

第三争点等に対する判断

一、争点について

1. 被告本人尋問の結果によると、本件申請書の「8.申請人(登録義務者)」欄の原告の住所、名称及び代表者の記載は、被告の妻が行ったものであること、同欄に原告代表者の印として押捺されている印影は、原告会社の実印によるものではなく、被告が本件申請に当たり特許庁において買い求めたいわゆる三文判によるものであること、被告は、平成2年3月30日、右のように作成した本件申請書を特許庁に提出し、本件申請を行ったものであることが認められる。

2. 本件申請書を右のように作成したことに関して、被告は、本人尋問において、原告代表者から電話で抹消登録につき、「やりたかったら、好き勝手にやったら。」と言われたと供述し、原告代表者は本件専用実施権の抹消登録申請をすることを承諾していた旨供述している。

しかしながら、証拠によれば、①被告は、昭和63年12月1日、千葉地方裁判所に対し、原告が原被告間で定めた実施料を支払っていないとして、原告を当該訴訟の被告として実施料の支払いをめぐる訴訟を提起しており、本件申請が行われた当時、原被告は係争状態にあったこと(甲9の一ないし三、原告代表者、被告本人)、②被告は、本件専用実施権については3年の期間が設定され、またその期間が満了したものと考えていたことから、期間満了を理由として本件専用実施権の抹消登録申請を行おうとしたが、特許庁の係官から本件専用実施権につき期間の登録がなされていないことを指摘されたため、抹消登録の理由を契約解除とすることとし、本件申請書の作成に及んだこと(被告本人)、③被告は、本件申請書を特許庁に提出した後の平成2年4月16日、原告に対し、原被告間の専用実施権設定契約の解除に必要な書類を送付することを求める書簡をファクシミリにより送信していること(原告代表者、被告本人、甲6)、④更にその後の同年5月及び6月に、原告は本件専用実施権の実施料を送金し、被告もこれを受領していること(甲7、8の一ないし四、原告代表者、被告本人)、⑤原告代表者は、本件申請について同年6月5日付けの特許登録済通知書が送付されて初めて本件専用実施権の設定登録が抹消登録されたことを知り、右通知書を受領した翌日に特許庁へ赴き、本件申請書を閲覧するに至ったこと(原告代表者、甲5)、⑥原告は、本件特許権の実施である樹木の移植を主たる業務内容とする会社であり、また、本件特許権の実施のために高額なブルドーザー等の機械を割賦払で購入し、その支払いには本件特許権の実施による利益を充てており、本件専用実施権の設定契約が解除されると原告はその業務を行い得なくなること(原告代表者)、以上の事実が認められる。

右認定事実に照らせば、被告本人尋問の結果中、原告代表者が本件専用実施権の抹消登録手続をすることを承諾していた旨の供述部分は、到底採用することができない。

ほかに、本件申請書が真正に作成されたと認めるに足りる証拠はない。

3. 右のとおり、本件専用実施権の抹消登録手続は、原告名義部分が原告の意思に基づかずに作成された、偽造の本件申請書により行われたものであるから、その回復登録手続を求める原告の請求は理由がある。

二、前項記載の認定事実によれば、原告の本件専用実施権の設定登録が契約解除により抹消された旨の事実は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実であり、その陳述又は流布行為により原告の営業上の利益が害されるおそれがあると認められるから、被告が原告の取引先に対し、文書及び口頭により、右事実を陳述し又は流布した行為は、不正競争防止法1条1項6号に該当し、その行為の差止めを求める原告の請求は理由がある。

(一宮和夫 長谷川浩二 長沢幸男)

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